2019/10/23 12:23


「お兄ちゃんはどこから来んさったの?」

誰もが振り向く高めの声、獲れたてのハタハタを手際よく下処理しながらも、お店や工場を訪れる人には必ず声を掛けて場を和ませる、通称「かぁちゃん」こと、マルニ竹内商店さんのおばあさん。「看板娘」ぶりはまだまだ健在です。

 

「マルニ竹内商店」さんは香住海岸に沿った「産業道路」と呼ばれる道沿いに、お店と加工場があります。

 創業時から「手作り」「無添加」にこだわった干物づくりをされ、工場の一角で香住を訪れる観光客に直接小売りを始めた結果、「おいしい」と評判になったことから、思い切って加工場の一部スペースを店舗に改装し、無添加干物の「製造」から「販売」までを手掛けるお店として、今も地元の方だけでなく、多くの観光客にも親しまれています。

当時、産業道路沿いの建物は、関東・関西の市場向けの「卸」が主な加工場ばかりでしたが、そこで初めてできた「店舗」、香住の海辺の通りを活性化させたパイオニア的存在です。


 「これを見ると、いつも原点に戻るというか、初心を忘れないよね」と話す竹内隆弘さん。店の看板の裏側には「添加物を使用せず おいしくて安全な食品づくりをめざしています」の看板が。香住、柴山で水揚げされた魚を、無添加で加工することを貫いてこられました。関西では生協関連団体への出荷もされ、当サイト運営者の私もバイヤー時代からお世話になり、信頼できる生産者のひとり。

物腰柔らかく、誰からも好かれるお人柄で、さらにお客さまをもてなす気持ちも人一倍お強い方です。



  昔ながらの加工場で最低限の設備で作り上げる、素朴でありながらも嘘のない干物づくり。短期間でしたが水産加工場で働いた経験のある私も、その日水揚げしたピカピカのハタハタ、カレイを目の前にすると、ふと触れたい衝動にかられ、この日は取材で訪れているにも関わらず、下処理を少しお手伝いさせて頂きました。

当然、何十年とやってこられているスタッフの皆さんとは比べ物にならないほど手際が悪いのに、「助かったよ~!」と言って頂き、心優しい方々です。


(ゆでたての紅ズワイガニ↗)

 「香住の船は、日本海の大和堆(やまとたい)という漁場までカニを捕りに行くんだけど、この大和堆で獲れるズワイガニはね、他の所より脚が長いんだよね。同じズワイガニでも北の方のカニは、少しずんぐりむっくりしてる感じっていうか、ちょっと違うんだよね」


「島根沖から香住で獲れるノドグロはね、脂乗りが他の地域と全く違って、小さくてもほんとに美味しい。香住で一番おいしい魚だね、ほんとこれは」

と、香住の魚の美味しさ、凄さを語りだしたら止まらない竹内さん。幼い頃から香住で魚を見てきておられるだけでなく、県の水産試験場との繋がりもあり、様々なデータに基づいた話でもあるので、一語一句が真実味を帯びています。そして新商品開発にも意欲的で、沈みがちな水産加工業界だからこそ、何かしら可能性を探っていく気持ちが全面に出ていて「とにかくやってみる」というスタンスを貫いておられます。  

 「一途にモノづくり」に励み、伝統を守りぬくことは、とても大切で、なおかつ大変な事です。無添加でのモノづくりを貫くスタンスで、仕入から製造そして販売と、当初から「5次産業」に取り組まれてきたマルニ竹内商店さん、これからもそんなスタンスで香住の新しい名産品を生み出してもらいたい、そのお手伝いが私にもできれば・・・そんな気持ちです。